アワビ資源維持のために

アワビの種苗

 アワビの天然資源が減っているため、産地ではアワビの子どもを放流する事業(= 種苗放流事業)が行われています。しかし、現在のように種苗を育てる技術は1800年代からはじめられた長年にわたる研究の成果です。さまざまな努力により、現在は全国の種苗法流量はおよそ3千万個にもなります。
 しかし、より効率的な種苗放流事業への要求は常にあり、現在もさまざまな研究が行われています。その研究成果の一つがアバロン・タグです。

日本における増殖研究の歴史

1800年代の後半
資源管理を目的とした生物学的基礎研究に着手
[ 資源保護・産卵期・人工授精と初期発生 ]
1900年代の前半
生物地理学および発生学的研究から漁業管理など
[ 各種の分布・生態・分類・採卵・初期生活史・食性・餌料海藻 ]
1950??70年代
「つくる漁業」の振興対策がとられ、種苗の生産に対する研究が中心となる
[ 紫外線照射海水による採卵技術、種苗の生産・育成・放流および移植・漁場 造成・漁業規則などの増殖対策、食性・餌料効率・人工餌料 ]
1970年代後半??1980年代
「つくり育てる漁業」の振興対策がとられ、種苗および成貝の生態学的研究および稚貝の栄養学的研究
[ 天然水域における行動・成長・すみ場・生残などの生態学的研究、餌料の基本組成・必須脂肪酸要求量など栄養学的研究、種苗量産に対する人工餌料の実用化 ]
1980年代後半
[資源管理型漁業]の振興対策がとられ、種苗の大量放流に伴う資源管理に関する研究
[ 稚貝の行動と自然環境、適正サイズ、放流効果の発現、成長、生残、減耗要因、漁場における適正漁獲量の推定 ]
1990年代
資源管理型漁業の継続と並行して遺伝学的研究が進められる
[ 遺伝子操作による倍数体の作成、交雑種作成 ]
研究の歴史からも明らかなように、増産対策として、日本は養殖よりも種苗生産・放流・ 漁場造成など、天然の生産力に依存することに力を入れてきた。
2000年代
生産量減少の原因調査と対策、生産量変動に与える環境要因の把握、自然界での再生産の基礎となる、浮遊幼生・変態直後の稚貝の生態、加入などの調査。疾病対策、施設内での養殖事業。

種苗放流数の推移

 現在の栽培漁業の一端を担うアワビ種苗の大量生産技術が確立した結果、アワビ種苗の全国放流数( 1981 ?? 1987 )は、1981年の12、500千個から年々増加して1987年には、23,000千個に達しました。1987年の放流数を種類別に見るとエゾアワビが最も多く56%、ついでクロアワビが32%、マダカとメガイが合わせて10%、トコブシとフクトコブシが3%でした。

種苗生産と放流

 人工種苗生産(放流用)は行政で公共事業的に行われているほか、漁協の自主事業としても行われています。
 アワビの種苗生産事業はかつて水産試験場で行われていましたが、最近では水産振興公社などに移管されて、公益的な事業として行われる地域が増えてきました。
 人工種苗は希望する地域の漁業組合に有償で配布されます。一般的には、資源管理を目的とした放流に使用する場合に限って自治体等の補助金が支給され、養殖事業用としては実費のままの価格になる場合が多いようです。

監修・資料提供:小池康之(元東京海洋大学助教授)